花色素アントシアニンはin vitroでpHの変化により連続的に色が変わる。花の色は多彩でかつ微妙に変化するが、その原因の一つが、細胞内で色素の存在する液胞pHの違いであろうと推定できる。本研究では、細胞内微小電極法による生きた花弁液胞pHの直接測定法を開発確立して花色と液胞pHの相関を定量的に明らかにすることを目的に行なっている。その中で今年度は、開花に伴い液胞pHが6.6から7.7へと1ユニットも上昇する空色西洋アサガオにおける、pH上昇機構の解明をカリウムイオン濃度の変化から調べた。 (1)細胞内微小カリウム電極の作成法および測定法の確立 細胞内微小pH電極の作成法に準じ、カリウムイオノフォアを充填した細胞内微小カリウム応答性電極を作成した。2mM〜400mMのカリウムイオンで直線性のある応答を示す電極を作成することができた。さらに、この電極を用いて、花弁液胞内のカリウムイオン濃度を測定した。 (2)アサガオ花弁の液胞カリウムイオン濃度の測定 空色西洋アサガオの開花ステージに伴うpH上昇が、単なるプロトンポンプの停止などによるものではなく、カリウムイオンなどのアルカリ金属イオンの流入などによるものではないかと考え、液胞内カリウムイオン濃度の変化を調べた。(1)で作成した細胞内微小カリウム電極を用いて測定したところ、赤紫色であるツボミの着色細胞の液胞カリウムイオン濃度は70mMであった。空色の開いた花弁の着色液胞のカリウムイオンは約半分の38mMになっていることが明らかになった。
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