研究概要 |
大豆イソフラボンや赤ワインに含まれるアントシアニンやカテキンなどを含めた、ポリフェノールと呼ばれる一群の抗動脈硬化作用は、学術研究発表だけではなく、マスコミなどでも最近頻繁に紹介され、社会的にも高い関心を集めている。そこで、このポリフェノールの抗動脈硬化作用に注目した。しかし、既報の論文の詳細を検討した結果、この抗動脈硬化作用そのものは、実は、Cu^<2+>などを用いた、in vitroでの抗酸化能を検討した成積のみから推定されたものであることが判明した。したがって、抗動脈硬化作用の評価系として不十分であり、さらに新規の評価系が切望されている。 そこで、申請研究では、抗動脈硬化作用の新規評価法により、ポリフェノールを評価した。この評価法の特色は、動脈硬化を抑制するアポリポタンパク質A-1(apoA-1)遺伝子プロモーターを利用した遺伝子転写活性評価法である。研究代表者がボストン大学留学により、習得したものであり、関連した成果も、動脈硬化の研究では、国際的に評価の極めて高い雑誌に掲載された(Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.(1998)in press)。apoA-1は、種々の食品成分の摂取により大きく変動することが知られている。しかし、ポリフェノールが、apoA-1に対して影響するという報告は、大豆イソフラボンについてのみ極わずかに報告されているにすぎない。おおよそ4000種類と言われるポリフェノールについての解析は、予想に反して極めて遅れている。そこでapoA-1遺伝子の転写活性に対する大豆イソフラボンをこの新規評価法で評価した。すでに、未発表ながら、驚くべきことに、大豆イソフラボン(ゲニステイン、ダイゼイン)が、ヒトの肝臓の培養細胞において、動脈硬化を抑制するapoA-1のレベルを上昇させるとともに、その遺伝子を活性化させることを発見した。したがって、その他の種々のポリフェノールにも大いに活性が期待できる。これまで、大豆イソフラボンの影響を中心に検討したが,ワイン(ブドウ)成分(アントシアニン、レスベラトロール、カテキン、エピカテキン)、イチョウ成分(ギンコライド、ケンフェロール、ケルセチン)、柑橘類成分(ナリンジン、ヘスペリジン)なども今後検討する方針である。
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