近年、ライフスタイルの変化や食生活の欧米化に伴って、ガン、動脈硬化、高血圧といった生活習慣病が増加している。動脈硬化の原因として高コレステロール血症の関与が指摘されている。このことから、コレステロール(以下CHOL)低下作用を示す新しい食品や食品成分に関心と期待が高まっている。そこで本研究では、我々の発見した成分の詳細な評価も含め、広範な食品成分から迅速かつ微量で脂質代謝改善因子をスクリーニングする新規の研究手法を導入し、新しい脂質代謝改善因子(CHOL吸収抑制因子、抗動脈硬化因子など)を発見し、その発見因子について、in vivoやin vitroで評価したい。今年度は、CHOL吸収抑制因子に焦点を当てて、我々の開発したリン脂質結合大豆ペプチド(ペプシンペプチド及びスミチームペプチド)について、血清CHOL低下作用を有する特定保健用食品に認定されている大豆ペプシンペプチド、キトサン(食物繊維)のCHOL代謝改善作用について比較検討した。 (1)ラットでの動物実験では、キトサンは体重増加量の顕著な減少を招いた。リン脂質結合大豆ペプチド、大豆ペプシンペプチド、及びキトサンは、カゼインと比較して血清・肝臓CHOLは有意に低下した。リン脂質結合大豆ペプチドは最も血清・肝臓CHOLが低下した。 (2)in vivoでの放射性CHOLを用いたCHOL吸収試験や、in vitroでのCaco-2培養細胞でのCHOL吸収試験では、リン脂質結合大豆ペプチドはCHOL吸収をカゼイントリプシンペプチドと比較して有意に低下させた。以上の結果から、リン脂質結合大豆ペプチドは、特定保健用食品としてすでに認定されている大豆ペプシンペプチドやキトサンよりも優れたCHOL代謝改善作用を発現することを初めて明らかにした。
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