申請研究では、以下の1.、2.の2つの新規の知見を発見した。 1.(1)抗動脈硬化因子に焦点を当てた研究では、アポリポタンパク質A-I(ApoA-I)遺伝子発現に対するポリフェノールの影響を検討した。その結果、大豆ゲニステインがヒト肝臓由来培養細胞(HepG2)において、動脈硬化を抑制するApoA-I及びそのmRNAレベルを上昇させた。(2)ラットの動物実験でも、ゲニステイン、ヘスペレチンの摂取は血清アポリポタンパク質A-Iレベル及びその肝臓mRNAレベルを上昇させることを発見した。 2.コレステロール(CHOL)吸収抑制因子に焦点を当てた研究では、我々の開発したリン脂質結合大豆ペプチド(ペプシンペプチド及びスミチームペプチド)について、血清CHOL低下作用を有する特定保健用食品に認定されている大豆ペプシンペプチド、キトサン(食物繊維)のCHOL代謝改善作用について比較検討した。(1)ラットの動物実験では、キトサンは体重増加量の顕著な減少を招いた。リン脂質結合大豆ペプチド、大豆ペプシンペプチド及びキトサンは、カゼインと比較して血清・肝臓CHOLが有意に低下した。リン脂質結合大豆ペプチドは最も血清・肝臓CHOLが低下した。(2)in vitroでのCaco-2培養細胞でのCHOL吸収試験では、リン脂質結合大豆ペプチドはCHOL吸収をカゼイントリプシンペプチドと比較して有意に低下させた。以上の結果から、リン脂質結合大豆ペプチドは、特定保健用食品としてすでに認定されている大豆ペプシンペプチドやキトサンよりも優れたCHOL代謝改善作用を発現することを初めて明らかにした。
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