研究概要 |
【目的】ヒト血清アルブミン(HSA)のグルタルアルデヒド(GA)修飾物(pHSA)は生体内における翻訳後修飾反応のモデルとして位置付けられる。我々はこれまでに抗pHSAモノクロナール抗体を作製し、その特異性の解明を試みてきた。そこで本年度の研究では、本抗体が認識するハプテン構造の解明を行うと共に、GA様の修飾構造を形成しうる生体内物質の検索を試みた。 【方法・結果】GA修飾物はタンパク質20mgとGA(2.5%)をpH6.8で反応させ調製した。GA修飾ウシ血清アルブミン(pBSA,20mg/ml)をpronaseE(2.0%)を用いて分解後、1万Da以下を分画し、pronaseE分解物とした。競合ELISAの結果、pronaseE分解物はpBSAと競合した。また、6-アミノヘキサン酸とGAの反応生成物であるPyridinium lがpBSAと競合したことから、抗原決定基へのピリジニウム骨格の寄与が示唆された。非競合及び競合ELISAにおいて、アルデヒド修飾BSA、並びにそのpronaseE分解物の交差反応性を調べた。その結果、グリオキザールでは交差反応性が認められなかったのに対し、グリコールアルデヒド、グリセルアルデヒド等は高い交差反応性を示した。従って、これらの生体内カルボニル化合物が、生体内においてGA修飾物と免疫学的に類似した構造を形成している可能性が示唆された。 来年度はこれらの知見に基づき、抗原決定基としてのピリジニウムの構造、並びに交差反応性を示したメイラード反応生成物の構造について、機器分析法を駆使してその解析を行う予定である。
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