研究概要 |
ヒト血清アルブミン(HSA)のグルタルアルデヒド(GA)修飾物(pHSA)は生体内におけるHSAの翻訳後修飾反応のモデルとして位置付けられる.我々はこれまでに抗pHSAモノクロナール抗体を作製し,その特異性の解明を試みてきた.本年度の研究では,脂質過酸化反応の二次生成物であるマロンジアルデヒド(MDA)とHSAリジン残基のアナログであるN-アセチル-グリシル-L-リジンメチルエステル(AGLME)との反応生成物を用いて,本抗体が認識するハプテン構造の解明を試みた. MDA-AGLME反応生成物はItakuraらの方法に従い,100mM AGLMEと10mM MDAを0.1Mリン酸塩緩衝液(pH4.5)1 ml中で室温にて反応させ調製した.MDA-AGLME反応生成物を競合ELISAに供したところ,抗pHSA抗体との高い交差反応性が認められた.次に,MDA-AGLME反応生成物を逆相HPLC分析に供し蛍光検出した結果,2つの主要なピーク(Fr.1,Fr.2)が認められた.そこで,この2つのピークを分画し,ピリジンで中和後,競合ELISAに供した.その結果,Fr.1が本抗体との結合性に大きく関与していることが明らかとなった.従ってFr.1の有する構造が,本抗体の認識するpHSAのハプテン構造と免疫学的に類似していると推察された.またFr.1のFAB-MSにおける分子イオンピークはm/e=699に認められ,さらにその蛍光,および励起スペクトルを測定したところ,蛍光極大455nm,励起極大395nmであった.これらの性質はItakuraらが報告したMDA-リジン付加物の性質と類似していた.従って,Fr.1は既知化合物であるMDA-リジン付加物と類似した構造を有していることが示唆された.
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