研究概要 |
腸管出血性大腸菌O157の凍結により受ける損傷について検討した. (1) 懸濁液および貯蔵期間の影響 大腸菌O157を4種類の溶液(50mMリン酸緩衝液(pH7.0),水,0.85%NaCl,Tryptic Soy Broth:TSB)に10^3および10^4CFU/mlで懸濁後,-20℃で1,3,7,14日間凍結貯蔵し,生残菌数(TSA培地で生育可能なもの),非損傷菌数 (セフィキシム,アテルル酸カリウム入りのソルビトールマッコンキー培地:CT-SMAC培地で生育可能なもの)を測定した.その結果,水またはリン酸緩衝液を用いた場合が生残菌数は多く,凍結1日〜14日後まで生残菌数の低下は2オーダー程度にとどまった.一方,NaCl溶液を用いた場合,損傷が大きく凍結14日後には10^4CFU/ml以下の菌濃度のものは1CFU/5ml未満となった.また,10^3CFU/ml濃度のTSBでは凍結14日後に1CFU/5ml未満となった.いずれの溶液中でも凍結貯蔵7日以降では生残菌数は2オーダー以上低下した.また,10^4CFU/mlのリン酸緩衝液の場合を除いて,非損傷菌は4オーダー以上低下し,凍結貯蔵3日以降はほとんどの菌が損傷を受けており,7日以降の非損傷菌数は1CFU/5ml未満となった. (2) pHの影響 2種類の緩衝液(50mMリン酸緩衝液,50mMクエン酸-リン酸緩衝液)を用いて,pH4.5〜7.5の範囲の溶液中で-20℃で3日間凍結貯蔵後に,生残菌数および非損傷菌数を測定した.その結果,pH5.5のリン酸緩衝液でもっとも生残菌数は多く,1オーダー低下したにすぎなかった.しかし,その他のpHでは10^3,10^4CFU/mlで凍結したものいずれも2オーダー以上生残菌数は低下し,特に,pH4.5,7,7.5では生残菌数は1 CFU/5ml未満となった.非損傷菌数については3オーダー以上の低下が見られ,凍結により大きな損傷を受けていることが明らかになった.
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