サツマイモ澱粉粕を原料とする鹿児島県独自のリサイクル産業技術であるクエン酸発酵の産業基盤を高めるため、そのクエン酸麹抽出残液に含まれる耐酸性アミラーゼを副産物として回収し、その特性を明らかにして有効利用する方法を検討した。まず、耐酸性α-アミラーゼと中性α-アミラーゼとの差異ついて化学修飾法を用いて活性中心に位置するアミノ酸残基を探った。リジン残基の修飾を行ったところ、中性酵素のタカアミラーゼAでは残存活性がほぼゼロになる修飾条件でも耐酸性酵素は失活しなかった。また、ヒスチジン残基の修飾を行った場合に、中性酵素の方は残存活性が約10%に減少する条件でも、耐酸性酵素は失活しなかった。したがって、タカアミラーゼAのLys209が耐酸性酵素ではLeuに、His210がGluに置き換わっているので、これらの残基が化学修飾の反応性の差異となっていることが示唆された。 グルコアミラーゼによる生澱粉消化に対して、耐酸性酵素は中性酵素より相乗効果が大きいことを見出した。凍結麹抽出液を用いて市販トウモロコシ澱粉から可食性マイクロカプセルとしての消化澱粉を調製し、その性質や取込み特性を探った。まず、化学構造についてイソアミラーゼ処理して消化澱粉の鎖長分布をHPAEC-PAD法で調べたが、未消化の澱粉との差異は認められなかった。一方、物性についてラピッドビスコアナライザーによる糊化特性を調べたところ、最高粘度は消化澱粉の分解率が大きくなるにつれて低くなるが、セットバックについては未消化とあまり変わらず、60%分解になってようやく減少した。また、色素と酵素蛋白を用いた吸着実験から酵素消化により生じた澱粉粒の空隙は負の電荷を持ち、陽電荷をもつ物質が吸着取込みに適していることが分かった。
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