クエン酸発酵はサツマイモ澱粉粕を原料とする鹿児島県独自のリサイクル産業技術である。その産業基盤を高めるため、クエン酸麹に含まれる耐酸性アミラーゼUAAを副産物として回収し、その特性を明らかにして有効利用する方法を検討した。各種クロマトグラフィーにより、比活性23U/mgの電気泳動的に均質な精製UAAを得た。本酵素は中性酵素とは分子量並びにN端アミノ酸配列が異なった。放射性グルコースで標識したオリゴ糖を基質として用いて切断様式を調べたところ、中性タイプのタカアミラーゼAなどとは異なる挙動を示し、UAAは5つのサブサイトと、3番目と4番目のサブサイトの間にある触媒部位を明らかにした。そして、化学修飾法を用いて活性中心に位置するアミノ酸残基を探った。また、混在するGAなどの酵素の影響を受けないように、非還元末端をガラクトース残基でブロックした基質Gal-G3-CNPを新たに合成し、耐酸性と中性α-アミラーゼとを区別した。一方、グルコアミラーゼによる生澱粉消化に対して、耐酸性酵素は中性酵素より相乗効果が大きいことを見出した。そこで凍結麹抽出液を用いて市販トウモロコシ澱粉から可食性マイクロカプセルとしての消化澱粉を調製し、その化学構造並びに糊化特性などの変化や色素取込み特性を探った。鎖長分布などは未消化のものと変わらなかったが、最高粘度やα-アミラーゼによる被消化性等の物性については酵素の消化率に比例した差異が認められた。色素吸着実験から酵素消化により生じた澱粉粒の空隙は負の電荷を持ち、陽電荷をもつ物質が吸着取込みに適していることが分かった。
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