研究概要 |
本研究では、HPLC-ECDを用いた新しい過酸化水素の定量法を開発し、それを抗酸化物質の自動酸化過程で生成する過酸化水素量の測定に応用した。初年度で方法を確立し、次年度と最終年度で、ユビキノール、フラボノール、カテキン類の自動酸化過程で生じる過酸化水素濃度を測定し、SODの効果を調べた。 (1)過酸化水素をHPLC-ECDで測定する方法はいままでなかったが、我々が開発したシステムによりそれが可能となり、簡便かつ高い選択性と高感度を示す方法であることが明かになった。これにより、タバコタール、コーヒー、アスコルビン酸水溶液などに存在する過酸化水素の定量も可能となった。 (2)ユビキノールのうちC_oQ_0H_2、フラボノールのうちミリセチン、カテキン類のうちEGCg,EGC,ECg,ECはいずれも抗酸化作用を示す物質である。ただしこれらの物質は自動酸化の過程で過酸化水素を生成することから、条件次第で酸化促進作用を示すことも報告されている。これらの物質の水溶液を調製し、一定時間静置すると、いずれの場合も過酸化水素が生成し、しかもSODによる生成量の抑制が見られた。これは、SODがスーパーオキシドの不均化反応を触媒して過酸化水素を生成する酵素であることを考えると、一見矛盾する結果である。しかし、スーパーオキシドが連鎖媒体となった連鎖反応の過程で過酸化水素が生成するというスキームにより合理的に説明できる。これらの物質の細胞毒性をカタラーゼやSODが抑制することも明らかにした。これは、少なくともin vitro系での実験においてスーパーオキシドの関与する過酸化水素生成がその毒性機構に関わっていることを示している。
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