本研究はクローナル植物であるチマキザサがなぜ暗い林内でも優先しうるのか?そのメカニズムはササの生理的統合によるものである、という仮説をもとに野外調査および野外操作実験、室内操作実験を行いササの生理的統合を実証した. 被陰と地下茎切断を組み含わせた野外操作実験を行った.ササは被陰されても明るい所と地下茎が繋がっていることによって、現存量の低下が抑制されたことを明らかにした。これは光合成生産物が地下茎を通じて暗い林内部分(地上稈や地下茎)に転流されていることを強く示唆した。 安定同位体窒素(^<15>N)を用いた室内操作実験は窒素が地下茎を通じて離れた別の地上稈に転流されていることを明らかにした。さらに、地下茎でつながった2つのラメートの間に環境の資源量(光量・土壌養分量)に差がある場合ほど、転流量は多くなり、資源勾配が転流を促進させていることが明らかになった。 ササは、ギャップなどの明るい環墳下で光含成を活発に行い、その同化産物を地下茎を遍じて暗い林内に生育するラメートに転流することによって、森林の林床で優先しているであろうことが強く示唆された。また、本研究は、このような生理的統含が、草本植物だけでなく竹・ササ類(チマキザサ)においても存在することを初めて見い出したものである。
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