研究概要 |
ヤマビルの発生予測と防除方法を確立するための基礎として,以下の項目について,調査と検討を行った。 1. ヤマビルの生活史を解明するため,1994年から始めた給餌を伴う室内飼育実験を継続して行った。その結果,1個体の最多の吸血回数は8回,産卵回数は21回,脱皮回数は12回,最長の生存期間は4年3ヶ月など,これまで不明であったヤマビルの生活史に関する基礎的なデータが得られた。今後も継続し,データの精度を高めたい。 2. ヤマビルの個体群変動要因を解明するため,1990年から始めた3箇所の定位置における月1回の野外個体群の採集を継続して行った。その結果,各年の採集個体数は3箇所とも1991年をピークに,その後,1996年まで減少したが,1997年から増加しだした。ニホンジカの生息数や降水量の変動がその要因として考えられた。 3. ヤマビルの好適な寄主であるニホンジカの生息数調査を1999年1月に行った。千葉演習林内の生息密度は約10頭/km^2であった。また,1998年の年降水量は2,083mmであった。ニホンジカの生息数に大きな変動はみられなかったが,降水量は過去30年間の平均値より多く,ヤマビルの生息には良い影響を及ぼしたと考えられた。 4. ヤマビルの捕獲技術を開発するための誘引実験は測定機械の搬入が遅く,ヤマビルの活動が鈍くなったため,機械の操作方法をマスターするにとどまった。ヤマビルの活動が活発になるのを待って,実験を開始する。 5. 当地域のヤマビル個体群の生態的特性を解明するため,1998年12月に屋久島で生息調査を行った。乾燥していて,ヤマビルの採集はできなかったが,屋久島でもヤクシカの増加に伴ってヤマビルの増加がみられるとの情報を得た。当地域と共通する現象がみられる屋久島での調査を今後も継続し,防除対策の検討に役立てたい。
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