研究概要 |
ヤマビルの発生予測と防除方法を確立するための基礎として,以下の項目について,調査と検討を行った。 1.ヤマビルの生活史を解明するため,給餌を伴う室内飼育実験を継続して行った。その結果,ヤマビルのふ化,採餌,成長,脱皮,交尾,産卵,死亡など,一生の全過程をほぼ明らかにすることができた。最長寿命は5年であった。 2.ヤマビルの個体群変動要因を解明するため,3箇所の定位置における月1回の野外個体群の採集を継続して行った。その結果,3箇所とも採集個体数は,1991年をピークに1996年まで減少し,その後また増加し,2000年には減少した。今後は,ヤマビル個体群の変動をニホンジカの生息密度や気象要因から明らかにしていきたい。 3.ヤマビルの好適な寄主であるニホンジカの生息数調査を継続して行った。その結果,ここ数年弱い駆除圧がかけられているため,ニホンジカの生息密度は1km^2あたり10〜20頭で推移していることがわかった。 4.ヤマビルの生息場所である林床の気象条件を解明するため,長期データ集録装置で気温と湿度の測定を行った。特に,夏季の渇水期においても,林床の湿度はかなり高く,ヤマビルの活動に支障がないように思われた。 5.ヤマビルの捕獲技術の開発及び標準的な採集方法を確立するための基礎資料として,採餌行動時におけるヤマビルの移動速度を明らかにした。林床でも毎分70cm,ビニール系の衣服などでは130cmも移動することがわかった。 6.千葉県産ヤマビルの生態的特性を解明するため,秋田県五城目町,鹿児島県屋久島,沖縄県西表島で採集したヤマビルの室内飼育を行った。その結果,ヤマビルの大きさには地域差があったが,摂取血液量には大きな差はなかった。
|