研究概要 |
主に関東圏でコゲラの捕獲作業を行い,色足環を付けて,生態観察を行った。佐渡島,伊豆大島などコゲラの生息記録のない島における直接の確認と環境の確認を行った。捕獲時に,個体群比較のための外部形態情報として,嘴長,嘴峰長,嘴高,嘴幅,左右の翼長,左右のふ蹠長,尾長,右翼の各初列風切羽長および体重の計測を行い,羽色の記録のための写真撮影とDNA分析のための試料として採血を行った。外部計測等においては,個体群比較のための資料が蓄積され,従来山階鳥類研究所所蔵標本にもとづいて推定された結果と同様の示唆が得られている。すなわち,伊豆諸島,南西諸島等の島嶼個体群において,体各部の中型化や飛翔力の低下を示す翼の鈍端化などについて共通な傾向がなく,諸島ごとに異なる歴史的背景があることが示唆されている。従来の見解と異なり,伊豆諸島八丈島などには,定着して生息しない(繁殖個体群はいない)ことなどが判明した。DNA分析のための,実験機器の整備を進めた。 引き続き,島嶼部を含めた未確認および未調査の地域個体群の資料収集に努め,分布様式の確認とデータの充実を進める。DNA多型検出のための実験と分析が,コゲラにとっての適切なマーカー(プライマー)が得られない状態で遅延しているが,引き続き情報を集め,試験を行う。ノグチゲラやルリカケスといった絶滅危惧種の遺伝的分析と関連させて,分析の検討を行う。また,新たに,島嶼への分散様式に関するモデルを作成して,複数の仮説を検証する試みも始める。
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