研究概要 |
森林土壌中の水分移動は,通常はダルシー則により記述され,フラックスとして表現することが可能である.すなわち,予め土壌のサクションと水分量との関係を把握し,サクション値に応じた不飽和透水係数を定めておけば,土壌中で実測した鉛直方向2点のサクション変動から動水勾配が与えられ,土壌水分フラックスを求め蒸発散量の評価が可能である.この考えに基づき本年度は,観測対象地である富士山麓試験地がら20cm径,長さ60cmの不撹乱土壌サンプルを塩化ビニール製のカラムで採取し,蒸発散にともなう水分移動を実験的に追跡した.実験室では,採取した土壌カラム側面に多数の小孔をあけ凧糸を差込み疑似根系とし,カラム上面と疑似悪系から蒸発させた.また,カラム側面には疑似根系の上・下部にテンシオメー夕を2組づつ挿入し,水分フラックスを求め,土壌カラムの重量変化から得た蒸発量と対比した.この結果,(1)上部と下部に設置しテンシオメータから評価した水分フラックス量の和は,カラムの表面と疑似根系から蒸発した水分量にほぼ等しく,(2)上部の水分フラックスはカラム表面からの蒸発によると推定され,(3)下部からの水分フラックスは模擬根系からの蒸発によると推定された.次年度は,土壌カラムの表面と側面の疑似根系からの蒸発量の定量的な分離を試み,現地観測データを蓄積するとともに,本研究における概念を現地観測結果に適用する予定である.
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