研究概要 |
【目的】本研究では,森林地の蒸発散現象について地表面蒸発と植生根系の吸収による蒸散とを分離評価するのが大きなねらいである.このため,今年度は土壌カラムを用いた蒸発実験を行い,カラム内の土壌水分フラックスの変化から両者の分離評価を試みた. 【実験方法】現地採取した長さ60cm,直径20cmの土壌カラムを作成し,カラム表面から5,10,20,30,40,50,55cmの位置にテンシオメータを埋設した.さらに,カラム側面には長さ10cmの綿製ひもを擬似根系として35本埋設した場合と70本の場合を準備した.実験では,カラム下端にパッドを置き水をはった状態でカラム内の全水頭が一定となるまで放置した後,表面蒸発と擬似根系から蒸発する水分量をカラム重量の変化で測定した. 【解析結果】解析では,土壌カラムに埋設した各テンオメータ間を層ごとに区分し,鉛直一次元状態のRichards式に有限要素法を適用し,実測したサクション変動をもとに各層のサクション分布を把握した.得られたサクション分布から各層の上下端を出入りする上向き・下向きの水分フラックス量を定量的に評価した.この結果,(1)地表面蒸発量は,最上層を上向きに通過するフラックス量として,(2)擬似根系による水分吸収量は,これが埋設された区間のフラックス収支量を与えることにより,カラム全体の実測水分減少量がほぼ追跡できることがわかった.次年度は,この考えを実際の森林地で測定した土壌のサクション変化に適用し,地表面蒸発と植生根系の吸収による蒸散とを分離評価し,細部検討を行う予定である.
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