研究概要 |
【目的】本研究は,森林地で生起する蒸発散現象について地表面蒸発と樹木根系の吸収による蒸散とを分離推定することがねらいである.このため昨年度は,現地採取した不攪乱試料(土壌カラム)を用い実験室内で蒸発実験を行い,Richards式による不飽和流動解析を適用してカラム表面からの蒸発量と擬似根系による水分吸収量を分離して推定した.今年度は観測対象地である富士山麓試験地で測定した土壌水分の変動に上記の解析手法を適用し,実際の森林地における林床面からの蒸発量と樹木根系による水分吸収量の分離推定を試みた. 【結果】解析から得られた結果を要約すると以下の通りである.(1)推定した1ヶ月間(8月)の蒸散量はその間の降雨量の約35%に相当し,(2)個葉レベル(生態・生理モデル)で推定した蒸散量より2倍ほど大きいこと,(3)1日当たりの蒸散量で比較すると1.7mm/dayを示した.また,(4)蒸発散量は,降雨量の56%に相当し,1日あたり2.7mmを示し,(5)短期水収支法で得た2.6-3.1mmや流出解析で得た2.6-4.0mmとほぼ等しくなる結果を得た.このことから,本解析手法の妥当性が示されたと考えている.次年度は,解析上の微調整を行うとともに細部検討し,より合理的な解析手法の確立を試み,最終報告を行いたいと考えている.
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