森林における小型土壌節足動物(ササラダニ、トビムシを中心とする)による植物遺体の分解プロセスと、これらの動物群の群集構造、分解系における機能的役割を明らかにすることを目的として調査を開始した。樹冠層、とくに枯死した枝葉が一定期間樹上に滞留する傾向の強い常緑針葉樹(スギ、ヒノキなど)の樹冠層では、樹上で付着したままの枯葉内にもすでに分解者が侵入することが予備調査で確かめられたことから、樹上とその直下の土壌中からサンプリングを行い、それぞれの種組成や個体密度、樹上と土壌の動物相の相異などを明らかにしようとした。 愛知県北東部に位置する名古屋大学農学部附属稲武演習林内の30年生スギ人工林内において、枝打ちのなされていない、直径の異なる5本のスギを選定し、それぞれの樹上において、おもに枯れあがりによって変色した枝をマークして枯死に至る過程を記録することとした。また、完全に枯死した枝を新しい枝と古い枝に分け、毎月2回、それぞれから一定量のスギ針葉を各試料木の複数の枝から採取して、ツルグレン装置にかけ72時間抽出処理した。また、抽出後、針葉の一部を分解して抽出誤差を修正した。一方、土壌サンプルは各試料木の樹冠直下の8地点(0-5cm層)から採取し、同様に抽出処理を行った。その結果、樹上から採取した枯死針葉サンプルからは、現時点で2種の異なるササラダニが糞塊とともに採集され、樹上での分解(破砕)作用の進行が確認された(種は未同定)。一方、土壌サンプルについては現在解析準備をすすめている。
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