ダニ、トビムシなどの小型節足動物は、分解者として森林生態系の物質循環に大きく貢献している。それらは、土壌だけでなく樹上にも生息することが知られており、とくにスギでは、枯死した枝葉が長期間樹上に付着していることから、すでにそれらによる分解過程が始まっている可能性が示唆される。本研究では、スギ樹冠内の枯死部における小型節足動物の群集構造を定量的に明らかにすることを目的として、種構成や個体数、季節変動などの基礎的な特性について調査をおこなった。 1.スギ樹冠層から枯枝葉を定期的に採取し、その後持ち帰った枯葉、枯枝から別々に、洗浄法により小型節足動物を抽出した。それらは実体顕微鏡下で目別に分類をおこなった。5月分のみは光学顕微鏡下で科までの同定を試みた。また、枯葉と枯枝の湿重、乾重も測定した。 2.スギ樹冠内の枯枝葉からはダニ目、トビムシ目、ハエ目幼虫が採集された。そのうちダニ目が個体数のうえで半数を占め、トビムシ目、ハエ目幼虫が残りを占めた。ダニ目は9科、トビムシ目は5科確認され、とくにダニ目はすべてが腐食性・菌食性のササラダニ亜目であり、樹冠層全体を対象にした調査によって示された種構成とは異なっていた。スギ枯枝葉内でも、枯葉と枯枝では種構成に違いがみられた。 3.スギ枯枝葉内の小型節足動物群集の個体数密度は、ダニ目の個体数密度の増加が全小型節足動物の個体数密度の増加に大きな影響をおよぼしていた。ダニ目は5月から9月にかけて増力傾向を示したが、これは樹冠層全体を対象とした調査結果とは異なっていた。スギ枯枝葉内の小型節足動物群集の個体数占有率では、いずれの月においてもダニ目が最も高い占有率を示していた。トビムシ目、ハエ目幼虫の個体数占有率は、高温により乾燥すると考えられる7月、8月に高くなる傾向が認められたが、これらの個体数密度は月によらずほぼ一定していた。
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