1)渓畔林の崩壊土砂減勢効果実態調査 1998年8月27日の豪雨により福島県西郷町において発生した約380個の斜面崩壊、土石流について、地形、植生、土地利用について詳細な調査・分析を実施した。この結果、崩壊土砂に関しては樹林による明らかな減勢効果が認められ、堆積範囲が田畑や宅地である場合に比較して、堆積範囲が樹林である場合には崩壊土砂の堆積距離は約1/2となることが判明した。 また1999年6月29日の豪雨により多数の斜面崩壊、土石流が発生した広島県広島市・呉市および徳島県西祖谷山村において災害直後に現地調査を行い、渓畔林の存在による崩壊土砂および土石流の減勢効果について調査を実施した。この結果、勾配の緩い箇所に存在する渓畔林には崩壊土砂の減勢効果があることが認められた。 2)渓畔林の存在が渓岸・渓床部における有効掃流力に及ぼす影響に関する研究 渓畔林が存在する場合の渓岸および渓床の有効掃流力および浸食速度の分布を明らかにするために水路実験を行った。渓畔林が存在しない場合の実験結果から、渓床面に作用する掃流力と粘着性材料の浸食速度はほぼ比例することが確認され、浸食速度から(有効)掃流力を算定する式を示した。実験結果より、渓畔林の存在により渓床の有効掃流力が減少することが確認された。一方、渓畔林の存在による渓岸の浸食速度は増大する結果となった。これは樹林の存在により水深が増加し、これにより渓岸下部の有効掃流力が増大するのが原因である。これらの実験結果を基に理論的な考察を加えて渓畔林が存在する場合および存在しない場合の渓岸部および渓床部における有効掃流力の推定方法を提示した。
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