本研究は1993年4月の群馬県万場町および1994年8月の広島県竹原市の林野火災を例にとり、局所地形、風向、風速、延焼速度、延焼距離、植生等を考慮して、林野火災延焼予測法を構築するものである。本予測法は先ず、風に影響をおよぼす地形要素をもとに作成した風力地形分類図に火災時の風向を与え、火災危険度地域区分図を作成する。次に風速、植生をもとに延焼速度、延焼距離を算出して火災被害区域想定図を作成する。本研究は風向、風速の変化に伴い任意に被害区域が想定できるところに最大の特徴がある。 得られた研究成杲の概要は下記の通りである。 1、風に影響をおよぼすと考えられる斜面形態、傾斜、斜面の方位、起伏量、標高、高地の方位の6個の地形因子を統計的に解析し、風に大きく影響する成分は「地形の険しさを表す成分」と「地形の傾斜方向を表す成分」である事をもとに、これらの成分を組み合わせて作成した風力地形分類図に、火災時の風向、風速、林相の情報を設定する事により、火災の延焼範囲を予測し林野火災延焼区域想定図を作成する手法を構築した。 2、本手法は風力地形分類図にある風向を与えて、その風向に対する火災の延焼区域を推定するため、任意の風向に対して延焼経路を推定できる特徴を持つ。 3、現在、国土交通省国土地理院により、全国の数値地形情報が整備され、コンピュータの能力も十分なものがある。本研究を発展させる事により、将来は全国の地形惰報(平面位置と高さ)と林相図のデータ等をコンピュータに入力しておくにより、火災発生と同時に火災の延焼区域の予測が出来る可能性がある。
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