研究概要 |
木炭は,その優れた吸着能力により今日では水質浄化など多方面に利用されているが,木炭の効果に対する漠然としたイメージが先行し木炭本来の効果を過大評価するなど,木炭の機能効果が正しく認識されていない面がある。そこで平成10年度研究においては,渓流環境浄化に関連する木炭の諸特性を知るために,自家製のスギ間伐材木炭,ヤナギ木炭,広葉樹木炭,および市販のレジャー用木炭,市販の備長炭を使用して以下の実験を行った。各実験の概要と結果は,次のとおりである。 (1) 各木炭500gを蒸留水15lに投入し,その後の水質変化をイオンクロマトグラフで測定した結果,スギ間伐材木炭のCl^-,K^+等の保有量はレジャー用木炭・備長炭に比べて圧倒的に低く,これは製炭温度や各種処理等の製造工程の違いに応じて本来的に原木が有する成分が変質するためと考えられた。こうした変質成分は吸着力に大きく影響するため,スギ間伐材木炭の成分組成は極めて純粋であることが明らかになった。 (2) JIS規格に基づく 100ppm BOD標準液を用いて各木炭の吸着速度を比較した結果,スギ間伐材木炭の吸着力は備長炭と同等であることが判明した。これはスギ間伐材木炭が極めて多孔質であるため吸着力が強いこと,および前述の備長炭の変質成分が結果的に備長炭の吸着力を阻害しているためと推察された。 (3) 沖縄県で採取した赤上から分離した浮遊濁度成分(10^<-5>mm以下)を用いて調整した約1500ppmの濁水に顆粒状にしたスギ間代材木炭を投入し,その後の濁度変化を測定した結果,スギ間伐材木炭の吸着効果は浮遊濁度成分にも及び,濁度が40ppm以下に低減されることが判明した。さらに濁水を攪拌し続け木炭と濁度成分との接触時間を増加させることにより,吸着速度は5倍に高められることが明らかになった。
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