研究概要 |
木炭は,その優れた吸着能力により今日では水質浄化など多方面に利用されているが,木炭の効果に対する漠然としたイメージが先行し木炭本来の効果を過大評価するなど,木炭の機能効果が正しく認識されていない面がある。平成10年度研究結果を踏まえ、平成11年度はスギ間伐材のさらなる普及を目指し以下の点を明らかにした。 1.前年度結果で有効性を明らかにした攪乱吸着による浮遊成分の除去速度は,単に木炭充填層を通過させただけの濾過の場合の4〜5倍で,濃度600ppmの試料水は一日後に100ppm,5日後に20ppm以下に濃度が減じられた。攪乱吸着の場合,この間に溶存態の吸着効果も認められその有効性が確かめられた。 2.白亜紀四万十層,第四紀火山岩,花崗岩,赤土(沖縄県産)の浮遊成分より作成した試料水を用いて攪乱吸着による浮遊成分除去実験を行った結果,その効果は地質に関係なく発揮されることがわかった。特に赤土を用いた高濃度試料水(800ppm)による実験結果が良好で,別途計画中の除去装置を併用することにより,奄美大島役勝川などにおいて河川改修に伴う赤土流出がリュウキュウアユの生存を阻害するような河川水の濁りを改善できる可能性のあることが示された 3.1cm角の大きさに破砕したスギ間伐材木炭を,マサ100に対して7の割合でマサ土中に混入して作成した試料土に対して,円筒法による浸透試験と透水試験を半年間継続して行った結果,スギ間伐材木炭によるマサ土の浸透能と保水性を改善する効果のあることが確認された。これにより崩壊を繰り返す宮崎県市房山において植裁環境を改善し荒廃地緑化を容易にしうる技術的可能性が明らかにされた。 4.熱効率を考慮して改良した製炭釜により,製炭時間が短くなり自家製木炭作成が容易となり,直径30cmのスギ根株を3時間で製炭可能となった。このことから、風倒木・流木などの比較的大径木も住民レベルで製炭可能となり,スギ間伐材木炭の普及が見込まれる。
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