研究概要 |
本研究は、環境に優しい木質資源を新しい高機能材料に転換、利用する技術を開発する目的から、金属が炭素表面に高分散担持した金属・炭素複合体(MCC)を製造する方法を検討し、最も高度な機能の一つと考えられる触媒作用をCO_2とNOが関与する反応系を利用して調査したものである。 ダケカンバ木粉中のセルロースを確立された方法でカルボキシメチル化(CM)、アミノエチル化(AE)、ジエチルアミノエチル化(DEAE)してpH7の酢酸ニッケル水溶液を含浸すると、CMではNi^<2+>がイオン交換的に、AE,DEAEではキレート的に導入され、およそ500℃で炭化すると木炭上に微粒金属ニッケル(粒径4-5nm)が生成し、その後適度な水素還元処理(420℃,8h以上)するとCO_2水素化反応(CO_2+4H_2→CH_4+2H_2O,300-500℃)を効果的に促進した。即ち、これら3種のNi担持500℃木炭(Ni/CMWC,Ni/AEWC,Ni/DEAEWC)の触媒効果は同じ熱処理温度とNi量では比較に用いたアルミナ(Ni/Al_2O_3)とは同等か20-30%劣るが無処理木炭(Ni/UTWC)や活性炭(Ni/AC)よりはるかに高活性であった。ただし、この触媒効果はCMWC>AEWC>DEAEWCであり、この序列は木材と金属イオンとの結合力の違いが反応中の熱安定性(シンタリング)を決定するためと説明された。なお、触媒活性は炭化温度や水素還元処理に大きな影響を受け、550℃で炭化し24h以上水素還元すると最も低活性なNi/DEAEWCでもNi/Al_2O_3の効果を上回った。同様な方法で銅を担持して還元処理なしにNO還元反応(2NO+C→N_2+CO_2,100-500℃)に対する触媒効果を測定した結果はCMWC≒AEWC≒DEAEWC>UTWC>AC(>None/UTWC)であった。この序列も炭素上の金属Cu粒子の分散性に従っており、前3者の触媒効果は非常に優れていた。従って、CM,AE,DEAEという3種の木材化学改質はいずれもMCC製造の前処理手段として有効であることが明らかになった。
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