平成10年度の研究実績の概要は次の通りである。 (1) 現在のマルチメディア社会における多層的メディア状況の分析から紙メディアと電子メディアの特徴を明かにし、両メディアが共存する状況における人間のメディア選択行動を決める重要な因子としてメディアがもつ人間との親和性、すなわちメディアの感性機能を指摘し、その理由を明かにした。更に時間と共に生じるメディアの交替に影響する主要な因子を明かにし、紙メディアの需要予測のための定性的モデルを構築した。またそれらの因子を組み込んだ次世代の紙の設計理論を構築し、米国紙パルプ技術協会のResearch Managenent Committeeにおいて招待講演を行った(1998.11)。 (2) 紙の物性値と視覚・触覚などの心理物理量を結びつける目的で木材パルプ繊維と各種合成繊維を混抄したシートを形成し、表面特性・摩擦感・触感などを計測し、データを解析からそれらの因子の相関関係を明かにした。 (3) 紙表面へのインクジェットプリンタによる画像形成における画像再現性に与える因子を明かにし、データの解析から画像の色彩科学的因子の変動に及ぼす紙の側の因子として表面光沢、平滑性、白色度などの重要性を明かにした。 (4) 認知心理学とメディアサイコロジーの成果を応用し人間の情報受容の特徴を解析し、紙の物性値・心理物理量・情報受容性の間を結びつける認知心理学モデルを構築中であり、コンピュータシミュレーションにより物性値と情報受容性の関係が明かになりつつある。
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