平成11年度の研究実績の概要は次の通りである。 (1)紙メディアにオフセット印刷およびインクジェットとレーザーカラーを中心とするハードコピー技術により情報を載せた状態でのメディアを作成し、色彩科学的データを中心とする解析から、メディアとしての紙メディアの特性を多面的に解析した。 (2)実験データに基づき、情報メディアとしての紙メディアと電子メディアを比較するための認知科学モデルを構築し、情報伝達における情報受信側の人間の脳内情報処理過程を定性的に数学モデル化し、紙メディアのメディアとしての特性を明らかにした。 (3)認知科学モデルでは特に情報を構成するコンテンツとメッセージが人間の生得的性質と習得的性質により影響され、特に紙メディアの特性に依存するメッセージは紙の表面特性に大きく依存することを理論的に明らかにした。 (4)電子書籍コンソーシアムのブックオンデマンド実証実験に参加し、その実験の結果の解釈に提案した認知科学モデルを適用し、書籍の場合には特に脳内での長期記憶貯蔵庫への収納に影響する視覚からの刺激が特に重要であり、その問題を中心に電子書籍の可能性を推測した。 (5)メディア理論と認知科学モデルから紙の物性値と心理量を結びつけ心理物理量を明らかにし、メディアサイコロジーの手法により心理物理的モデルを提案し、また感性工学的手法により紙メディアに感性機能を付与するための条件を明らかにした。
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