研究期間中、次の研究結果を得た。 1.水分定常状態におけるクリープと破壊 ベイツガおよびスギ材のASTM準拠CT試験体を用い、クリープ試験の負荷レベルは静的破壊荷重の45%から85%の間である。試験中のCOD(き裂開口変位)、AE(アコースティックエミッション)、顕微鏡(VTR連動)によるき裂長さの観察、温・湿度を同時計測し、破壊に至るき裂の挙動を明らかにした。破壊に至るまでの時間は、定常クリープ期のクリープ速度の最小値から推定できた。負荷レベル60%以上では、AE発生は負荷直後と破壊直前に多く発生し、定常クリープ段階でも少しずつ発生していた。クリープ限度は、負荷レベル50%以下(定常クリープの段階のAE発生はない)と推定された。 2.水分非定常状態におけるクリープと破壊 スギ材を用いて、自然環境下のクリープ実験を行った。自然環境下では、低い負荷レベル(40%)でも短時間で破壊した。雨天日のように破壊直前に1日以上高湿度の時間が継続すると急速にCODが増加し、破壊に至った。CODは1日周期の変動を示したが、メカノソープティブクリープは認められず、相対湿度の増加とほぼ同位相で増加した。水分吸収による水分応力がき裂先端の応力拡大係数を増加させ、破壊を促進したと考えられる。 3.負荷速度の影響および応力緩和実験によるモデル化 温・湿度一定条件下の応力緩和実験とMaxwellモデルによる検討を行った。緩和時間には応力レベルがおよそ80%以上の領域で非線形性が現れた。き裂材の破壊基準については、CODの弾性成分による評価が妥当であった。
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