白色腐朽菌3菌株(IZU-154株、Phanerochaete chrysosporium、カワラタケ)を用い、培地中の窒素あるいは炭素量を変化させて高分子ポリエチレン膜の処理を行った結果、窒素あるいは炭素源を制限した培養条件下で効率的な分解が認められ、IZU-154株が他の2菌株よりも優れたポリエチレン分解能を示した。さらに、分解能に劣っていたP.chrysosporiumとカワラタケについては、窒素あるいは炭素源を制限した培地にMn(II)を添加するとポリエチレンの生分解性が向上した。これらの結果は、リグニン分解酵素であるマンガンペルオキシダーゼ(MnP)がポリエチレン分解にも関与している可能性を示唆したため、部分精製MnPを用いてポリエチレン膜を処理した。その結果、Tween 80、MnSO_4(Mn(II))およびマロン酸緩衝液の存在下で高度な分解が認められたが、MnPの活性化に必要とされている過酸化水素の供給は不要であった。そこで、Tween 80の役割や過酸化水素非供給系におけるMnP活性化機構について検討したところ、Tween 80を含む界面活性剤はMnPを安定化させる役割を有していること、さらにはMnP反応系に存在するマロン酸緩衝液が、Mn(II)の自動酸化で生成してくる微量のMn(III)で分解を受けてヒドロキシペルオキシ酢酸や過酸化水素を生成し、これらがMnPを活性化していることが明らかとなった。
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