木材中の自由水の移動は各位置でのウォーターポテンシャルを考えれば理解できる。木材中に発生するウォーターポテンシャルは、毛管に生じるメニスカスによって決まる。従って、外部からウォーターポテンシャルを低下させる処理を木材に加えて、脱水させ、その脱水挙動を求めれば、木材中に発生しているウォーターポテンシャルが理解できる。乾燥によらず脱水させるには大きな遠心力が必要であることから、遠心力による木材組織構造の変化が予測されたので、今年度は壁孔の破壊について検討した。得られた結果は次の通りである。 1.壁孔の形状をスギ材とベイマツ材について詳しく調べ、スギ材の有縁壁孔対はトールス壁孔縁の重なりが少なく、しかもトールスの厚さが薄いため、破壊し易い形状であることを明らかにした。そして乾燥に伴って辺材部の壁孔が破壊することをSEMで確認した。破壊を定量化するため、同一条件で最低1000個の壁孔を観察しているので精度は十分である。 2.壁孔の破壊に影響する因子としては、試験材の長さが大きく影響することを見いだした。また壁孔の破壊率は乾燥条件によっても異なり、乾燥温度が高いほど少なく、内部加熱方式では少なくなることを明らかにした。なお心材での破壊はほとんど観測されなかった。 3.透過性と壁孔破壊の関係を、染料の浸透性で調べた結果、破壊率の高いものほど浸透性がよいことを明らかにし、壁孔の状態が透過性に影響を及ぼすことを証明した。 4.壁孔を破壊させる圧力を遠心力を使って調べた結果、遠心力を作用させ壁孔を破壊させる方式では、乾燥での壁孔破壊とは異なり温度が高いほどよく壁孔が破壊すること、スギ材では0.68MPaで50%程度の破壊が生ずることを明らかにした。また遠心力法では、スギ材の辺材にそれ以上の圧力を加えることが困難であった。
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