ほん研究期間で得られた内容の一部は次の通り。 1.遠心処理後の試験材中の飽水率(SR)とそこに作用したと思われるウォーターポテンシャル(Y)の関係がLog_<10>SR=aY+2で表せることを見いだした。aが大きいほどSRに対するYの髪響が大きいことになり、aは非定常状態の透過性を表す新しい係数であることを提示た。 2.遠心力の大きさと辺材の脱水量の関係において、遠心力が増加しても脱水量が一時的に飽和する時期があり、その後また急激に脱水量が増加する現象を見いだした。前者は高含水率時には壁孔室の中央に位置していたトールスが壁孔縁に付着すると考え、与えた遠心条件から計算し、トールスを移動させる圧力差はスギ材の場合で0.119から0.178MPaと推定した。後者については、一旦大きな遠心力で処理した試験材を飽水化後、再度小さな遠心力で脱水したところ、処理しなかった材に比べ大きな脱水量を示すことから、壁孔壁の破壊を確認した。材内中の飽水率分布から、壁孔壁の破壊に要する圧力差はスギ材の場合0.248から0.68MPaの応力が必要であった。 3.壁孔の形状をスギ材とベイマツ材について詳しく調べ、スギ材の有縁壁孔対はトールスと壁孔縁の重なりが少なく、しかもトールスの厚さが薄いため、破壊し易い形状であることを明らかにした。そして乾燥に伴って辺材部の壁孔が破壊することを定量化した。壁孔の破壊に影響する因子としては、試験材の長さが左きく影響することを見いだした。また壁孔の破壊率は乾燥条件によっても異なり、乾燥温度が高いほど少なく、内部加熱方式では少なくなること明らかにした。なお心材での破壊はほとんど観察されなかった。透過性と壁孔破壊の関係を、染料の浸透性で調べた結果、破壊率の高いものほど浸透性がよいことを明らかにした。
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