研究概要 |
本研究では、抗腫瘍性薬用キノコであるメシマコブが耐朽性の高いヤマグワに対し宿主選択性を示す原因を明らかにしようとした。 メシマコブはヤマグワ木粉で培養することにより、クヌギやコナラより成長は著しく促進された。また、ヤマグワではマンネンタケ,カワラタケ,シイタケの成長は著しく抑制されることが示された。このことからメシマコブはヤマグワに対して明らかな樹種選択性を示すことが確認された。熱水抽出によってヤマグワのメシマコブに対する成長促進物質と他の木材腐朽菌に対する成長抑制物質がそれぞれ抽出可能なことが判明した。 ヤマグワのメタノール抽出物のフェノール画分にメシマコブ以外の木材腐朽菌に対する著しい菌糸成長抑制効果が見られた。ヤマグワより、オキシレスベラトロールを抽出単離し、その阻害活性を検討したところ、上記のフェノール画分と同様の傾向を示した。したがって、ヤマグワの木材腐朽菌に対する阻害作用は主としてオキシレスベラトロールによることが推定された。また、メシマコブと他の木材腐朽菌を同一培地で対峙培養した結果、オキシレスベラトロール存在下においてもメシマコブの他の菌に対する競争力は弱く、容易にコロニーが浸食されることがわかった。 以上の検討により,メシマコブはヤマグワの熱水抽出物によって菌糸成長が促進されるが、一方、メシマコブ以外の木材腐朽菌はヤマグワに含まれるオキシレスベラトロールによって菌糸成長が著しく抑制されるため、菌糸成長が遅く競争力の弱いメシマコブでもヤマグワでの繁殖が可能ではないかと考えられた。このことが、メシマコブが耐朽性の非常に高いヤマグワをあえて宿主として選択する理由と推定された。 しかし、ヤマグワの熱水抽出物中のメシマコブ菌糸成長促進因子は同定するまでには至らず、今後の研究に期待される。
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