研究概要 |
木質材料としてリグニン2種(MWLに近いALCELLリグニンおよびクラフトグニンとしてINDULIN AT)、爆砕木粉2種(スギおよびブナ;210℃、10分蒸煮爆砕)を用い、白色腐朽菌4種(Phanerochaete chrysosporium,Irpex lacteus,Corious versicolor,Pychoporus coccineus)、褐色腐朽菌1種(Tyromyces palustris)を植菌して微生物変換を行った。微生物変換試料の評価は、当初スペクトル的に検証する方法を考慮したが、試料によるばらつきが大きいため、接着力評価を優先させ、優れた結果が得られた時にスペクトル情報を得ることにした。接着力評価は、微生物変換体を乾燥後微粉化し、フェノール樹脂(PF)と等量混合した組成物について行った。上記の各種条件で実験を行った結果、組成物はPFよりはやや優れた性質を示すが、微生物変換しない爆砕木粉とPFとの組成物と比較すると顕著な差は認められず、長時間培養を行うとむしろ性能の低下が認められた。この初年度の結果に基づき、続く年度ではインデューサーの添加による誘導効果について検討を加えた。上記条件に加え、インデューサーとして3種類の物質(H_2O_2,Mn(II)SO_4,Tween80)を各段階の培地に添加して影響を調べた。その結果、Mn(II)の添加による誘導効果が認められ、30%程度の強度向上の例が見出されている。今後条件をさらに絞り、実用化検討を行うと同時に、スペクトル法等の分析手段を駆使してどのような物質交換が行われ、物性向上に寄与しているかを検討することが必要である。これらに関して引き続き研究を継続する予定である。
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