研究概要 |
平成12年度は昨年度クローニングに成功した卵黄蛋白cDNAを鋳型にして,プローブを合成し,ハイブリダイゼーション法による卵巣発達にともなう発現状況とその調節を中心に検討した。 1.DIG標識プローブの評価と卵黄蛋白前駆体遺伝子 前年度クローニングした卵黄蛋白cDNAのうち,1698塩基と最も長いcDNAクローン(cSYP-1)のVtg(Accession No.AB055960)をもとに,DIG-dU取込みによる3種のPCRプローブを作製した。N末端に近いほうからSP3-ASP3(571bp)・SP5-ASP2(610bp)・SP1-ASP1(552bp)とした。いずれも標識によるPCR増幅断片の見かけのサイズ増大が確認された。成長期の卵巣から調製した全RNAのノザンブロッティングの結果,いずれも10kb以上の位置に単一バンドを示し,特にSP1-ASP1が最も反応性が高かった。さらに,この大きさはこれまで知られているものの2倍以上であり,分子量45万のホタテガイ卵黄蛋白をコードする遺伝子Vtgがこれに相当することが強く示唆された。 2.DIG標識SP1-ASP1プローブによるVtg発現解析 卵母細胞が極わずかな12月・成長期の2月・産卵期4月の卵巣でのVtg発現は,12月は相対値で468であったが2月には7172と15倍に急増し,4月になっても5528と低下したものの高い値を維持していた。卵黄蛋白量は2月にピークを迎えるにも関わらず,産卵期でもまだVtgが発現していることは,この種のmRNAの長い半減期に起因しているとともに,転写後の翻訳調節によって卵黄蛋白合成が調節されていることを示唆している。昨年行ったと同じ頭部・足部神経節抽出物によるIn vitro培養でも,その発現に対する効果は蛋白レベルでの結果を反映せず,培養期間中何ら変化を見せなかった。この結果も先の転写後の翻訳調節の可能性を反映しているのかもしれないが,本来の発現誘導を再度確認する必要がある。 発現細胞の特定には至らなかったが,ホタテガイのVtg遺伝子はこれまでのものと大きさが異なり,その発現動態からも卵母細胞自身で発現し,それが誘導を受け発現量を増やしていることが推測された。
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