生態系が定常状態になく、短期的にも長期的にも非定常であると言う前提のもとで、漁業資源の有効利用を図る指標として、生態学の繁殖価を応用した収穫価という概念を提唱した(松田、山内ら1999)。また、非定常系における野生生物管理という側面は、水産資源だけでなく、陸上動物にも共通している。北海道から水産学の成果を応用するよう求められ、道東地区エゾシカ保護管理計画策定にかかわり、その理念を発表した(松田・梶ら1999)。これは、生態学的情報の不確実性と非定常性を考慮しつつ、管理に失敗するリスクを最小にするという考え方に基づいている。 さらに、資源保護上の問題点として、共有の悲劇を招くことで知られる公開漁場の自由競争下のゲームで、必然的に不平等な分配が行われてしまう可能性について指摘した。これは多くの多細胞生物に見られる異型配偶、つまり精子と卵子の大きさの不平等をもたらす収束不安定性という概念と、同値であることを示した(松田、Abrams1999)。 総じて、浮魚資源は人為的な影響がなくても非定常性で、マイワシ、マサバ、カタクチイワシが交替で卓越するが、魚種交替の時期については不確実性がある。このような複雑な浮魚資源を持続的かつ有効に利用するには、来年度には以下のことを実証する。(1)市場の柔軟性(時代によりマイワシ、カタクチイワシなど魚種を替えて流通、消費すること)、(2)漁海況の継続的、科学的監視(魚種交替の時期や、来遊量・加入量の年変動などは海況に左右されるので、それを監視する)、(3)漁獲対象の十年名切り替え(高水準期の魚種を取り、低水準期の魚種を保全する)が必要である
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