研究概要 |
日本近海太平洋側のマサバ資源は,1990年代の低迷期に92年と96年の2度にわたり、卓越年級群が発生した.しかし,これらの年級群は未成魚のうちに強い漁獲圧を被り、成魚になる前に減耗し,産卵親魚量の回復には繋がらず、マサバ資源は以前低迷を続けている.1970年代から80年代にかけては成魚を中心に漁獲していたが,1993年以降未成魚の漁獲圧が高まった.1999年の資源状況から出発して,1990年代と同じ頻度で卓越年級群が各年独立に発生すると仮定した数理モデルにより,今後の資源回復状況を予想する数理モデルを開発した。卓越年級群の翌年に未成魚の漁獲を控えた場合,1970-80年代の漁獲圧で獲りつづけた場合に資源がどれだけ回復し,漁獲量が現実より多いか少ないかを,再生産関係の年変動を考慮した個体群生態学モデルを用いて検討した.その結果,90年代の漁獲圧を今後も続けた場合,マサバ資源が回復する可能性はほとんどないこと,70-80年代の漁獲圧を続けた場合,2020年までにマサバ資源が1980年代の水準にまで回復する可能性は5割以上であることが示唆された.また、現在の漁獲圧では卓越年級群直後は漁獲量が増えるものの、成魚資源量の回復に繋がらず,結果として長期的な漁獲量を増やすことができないことがわかった。
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