研究概要 |
海洋生物の遊泳行動を解析する手法としては超音波・電波によるバイオオテレメトリーや,ビデオカメラによる画像解析が一般的である.しかし,これらの手法は追跡に多大な費用・労を要したり,水中での画像取得の困難性などの問題がある.そこで,我々は近年発展が著しいイクロデータロガーを利用した海洋生物の行動解析を試みた,国立極地研究所で開発されたマイクロデータロガー(UVVE-PD2G)を,南極リュッツホルム湾のアデリーペンギン,生け簀内のマダイ及び実験池(125m × 42m × 3m)のマダイに装着し,データを得た.UWE-PD2Gは長さ122mm,直径20mm,水中重量17.79で遊泳速度(P),水深(D)に加えて2方向の加速度(2G)測定できる.加速度のスペクトル解析からペンギンの潜水行動中のフリツパーの羽ばたき回数(3〜4日Z)とマダイの尾鰭の振動回数(2〜4Hz)が推定できた. バイオテレメトリーを用いて自由に遊泳するマダイの遊泳行動と,代謝やストレスとして有効と考えられる心拍数とを同時に測定し,両者の関係を定量的に解析した.1998年10月に(社)日本栽培漁業協会百島事業場の海水池(125m×42m×3m)で実験を行った.マダイ(叉長52.0cm,体重2.66kg)に開発中の心拍数測定用超音波発信器(DOK-I:長さ50mm,直15mm,水中重量6.4g)と加速度データロガー(UVVE-PD2G:前述)を取り付け,池に放流した.心電に対応したDOK-1からの超音波パルスは,水中に設置したハイドロフオンで受信され,そのパルス間隔がパーソナルコンピュータに記録される.約12時間にわたる側定結果から,午前6ごろを境に心拍数が94±3.4bpmから99±6.8bpmに増加した.この心拍数の変化は加速度ロガーで得られた遊泳行動の変化に対応している.
|