研究概要 |
前年度の研究により、人為三倍体の精子を用いて作出したドジョウの一部は高二倍性、高三倍性の異数体として生存可能なことが判明した。本年度は、これらの妊性を調査するとともに、ドジョウでは自然発生の異数体の、イワナについては半数体-二倍体モザイクについて検討した。 (1)異数体ドジョウの妊性 : 四倍体(雌)x人為三倍体(雄)の交配に由来する1歳魚は高三倍性(〜3.5n)であり、うち1個体(3.2n)は1.7nを中心とした異数体精子を少量形成することが判明したが、精子活性や受精能力の検討には到らなかった。 (2)自然異数体ドジョウの出現 : 正常二倍性の核型(2n=50,10m+4sm+36t)に加え、大型と小型の過剰な染色体をもつドジョウ家系を見いだした。前者は正常核型中の染色体と同様のサイズを示し、後者は最小の染色体よりも明らかに小さい微小染色体であった。これらドジョウでは正常の核型に加え、体細胞では0〜3の大型、0〜4の微小な過剰染色体が見られ、生殖腺では0〜8の大型、0〜5の微小過剰染色体があった。減数分裂像では25〜27の二価染色体、1〜2の一価染色体ならびに1〜4の微小染色体が見られた。この様な過剰染色体を持つドジョウは外見上は正常であった。 (3)自然半数体-二倍体モザイクイワナ : ドジョウ以外の魚種についても異数体を検索したところ、高知県の一養魚場に赤血球が異常に小さいイワナを見いだした。精査したところ、血液、脾臓、肝臓は半数性、脳は二倍性であり半数体-二倍体モザイクと判断された。本個体は外見上は異常ではないが、不妊の雌であった。
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