研究概要 |
ヒメダカに,内分泌系撹乱物質としてPCBと有機スズ(TBT)を複合(各1μg/g)投与し,その産卵量を調べた。その結果,PCB+TBT投与によりヒメダカの産卵量,産卵頻度および受精率が低下しておりPCBとTBTが相加的に作用して内分泌が撹乱されたと推定された。また投与雄の繁殖行動を明らかにするため,無処理の雌にプロスタグランジンを注射して,雄の産卵行動を誘起し,それをビデオで撮影し,後でその追尾,遊泳円舞,交叉,交尾などの行動を観察して性行動の指標とする方法を開発した。本方法を用いて,TBT+PCBや17βestradiolに曝露された雄について調べた結果,平常遊泳行動は有意差がないが,遊泳円舞や交叉などの性行動の頻度が有意に低下することが明らかとなった。本方法は,内分泌撹乱物質に曝露した雄の性行動能力を定量的に調べる唯一の方法である。 また,アコヤ貝にTBTを2μg/個体の割合で注射投与してその貝柱,中腸腺,生殖腺他への移行を調べた結果,中腸腺と生殖腺へ高濃度で移行する事が明らかになった。しかし,投与後5日目で検出限界以下に低下した。よって,環境中でTBTに常時暴露された貝では,中腸腺や生殖腺にTBTが蓄積して内分泌を撹乱する恐れがある。
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