1998年度は、微生物食物連鎖の構造を把握するために、ピコプランクトン、ナノプランクトンおよびマイクロプランクトンの豊度を同時に調査した。 長崎大学練習船長崎丸の春季北部東シナ海調査航海で得られた試料を用いた(全12測点)。ピコプランクトンはDAPIで、また、ナノプランクトンはProflavinで染色を行い、蛍光顕微鏡をもちいて計数した。マイクロプランクトンは定量渡銀染色法により永久プレパラートを作成し、生物顕微鏡をもちいて計数した。クロロフィルα濃度を環境要因として同時に計測した。 ピコプランクトンの豊度は5.4×10^8-3.6×10^9cells/lで、深度方向に対する違いはあまり顕著ではなかった。ナノプランクトンの濃度は4.6×10^5-6.0×10^6cells/lで、大陸側で、かつ表層で高い傾向を示した。マイクロプランクトンの豊度は5.1×10^2-2.5×10^5cells/lで、水平方向に対する変化が大きく、クロロフィルa濃度の最大値を示した測点で最大であった。 クロロフィルa濃度とプランクトン豊度との関係は、いずれのグループにおいても相関は正であった。しかし、その傾きはピコ、ナノプランクトンで小さく互いにほぼ同値、マイクロプランクトンで大きくなっていた。北部東シナ海春季において、ピコプランクトンとナノプランクトンは互いに密接な関係を持ち、両者の重要性は、植物プランクトン現存量の小さいところでより大きいと考えられる。一方、マイクロプランクトンはピコ・ナノプランクトンとの関係が密接であるとは言い難く、その重要性は、植物プランクトン現存量の大きなところでより大きくなっていると考えられる。 1999年度は南部東シナ海を調査し、得られたサンプルにより群集構造の多様性と主の多様性を同時に解析する予定である。
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