微生物食物連鎖を構成するプランクトンのうち、サイズの小さなピコプランクトンおよびナノプランクトンは、それよりもサイズの大きいマイクロプランクトンとは異なる分布挙動を示すことが明らかになった。ピコ、ナノプランクトンは、東シナ海内においてほぼ均一に分布し、水塊の違いによる現存量の違いは極めて小さい。しかしながら、マイクロプランクトンは、水塊のちがいによるその現存量の変動が大きく、大陸棚水影響域でより高密度分布を呈し、黒潮水影響域でより低密度分布を呈した。 マイクロプランクトンの重要な構成者である繊毛虫プランクトン群集は、独立栄養ナノプランクトンとの間で、現存量における正の相関が有意であった。両プランクトン群集の好適な増殖環境は類似しており、独立栄養ナノプランクトンは繊毛虫プランクトンの好適な餌サイズであることから、両者の間には密接な食う食われるの関係が存在する可能性が考える。 また、繊毛虫プランクトンのうち殻を持たない分類群は、殻をもつ有鐘繊毛虫に対して、その現存量が圧倒的に優占するにもかかわらず、未同定種が少なからずも含んでいることが明らかとなった。そのうち、サイズの大きな個体については種の判別が可能であり、subclass Choreotrichiaに属する新Tontonia種について記載し、その生態学的特性を明らかにした。
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