研究概要 |
【目的】前年度は、小型種のワムシBrachionus rotundiformisを材料として、両性生殖誘導機構の解明および交尾機構、特に性フェロモンの生化学的性状について研究を行った。これに基づいて、今年度は、休眠卵量産技術の開発を試みた。 【方法】ワムシは長崎大学で保存している20株のS型ワムシの中でも休眠卵形成能力が最も高かったハワイ株と浜名湖株を使った。0.5トン水槽(各株毎に3水槽を使用)を用い、15日間培養(4日に1回間引きを実施し、フィルタ一を1枚使用)を行った。培養条件は、耐久卵形成に適した、水温30℃,塩分16pptとし、餌料には凍結ナンノを用いた。間引きは3日に1回実施し、間引き後にワムシ密度が400個体/mlとなるようにした。 【結果】ハワイ株は順調に増殖し、培養期間中最大1000-1200/mlに達した。5日目に1回目の収穫と水換えを行い、以後、3日に1回ずつ同様の作業を行った。両性生殖の発現は2日目から10日目にかけて起こった。両性生殖誘導率は最大50%に達する例もあったが、水槽間での変動が大きく、5-20%を示すことが多かった。受精率もいずれの水槽でも日変動が大きく、安定した両性生殖の誘導、進行が起こりくい状況だった。3水槽での休眠卵形成数は700万、500万、110万だった。 浜名湖株の両性生殖誘導は培養初期の5日目までに集中的に起こり(誘導率30-50%)、以後は一つの水槽で10日目に発現がみられたほかは全く起こらなかった。受精個体は15日間の培養期間のうち、2-3日しか現れず、間引き培養によって両性生殖を高い割合に維持しようとした試みは、うまく機能しなかった。しかし、3水槽での休眠卵形成数は6500万、7900万、2700万で、ハワイ株よりも多数の休眠卵を得ることができた。 形成された休眠卵は、既に大型ワムシ種に対して確立した凍結乾燥方法で長期保存でき、ふ化率50-60%を得た。
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