研究概要 |
板鰓類11目24科46種103個体から平衡砂を取り出し、プラズマ発光分光分析装置を用いてそれらのCa,P,Mg,Sr,Baの5種の元素の含有量を測定した。多くの種の平衡砂は白色を呈していたが、ノコギリザメ、カスザメ、ネコザメ、シビレエイ目の3種では黒い粒子を多量に含んでいた。平衡砂の重量は0.01〜0.5gの範囲にあり、種により異なり、成長に伴い増加した。上記の黒い粒子を含まない種では平衡砂1g当たりの各元素の含有量はCaで192〜359mg、Mgで5mg以下、Srで4〜6.3mg、Baで0〜17μgで、各元素のmol分率はCaが93%以上、Mgが0.1〜0.9%、Srが1.6〜1.9%、Baが0.002%以下であった。一方、黒い粒子を含む平衡砂を持つ種ではCa濃度は32mg/g以下、Mg濃度は2.09〜4.96mg/g、Sr濃度は0.23mg/g以下、Ba濃度は0〜50.71μg/gとなり、mol分率においてもPの値が黒い粒子を含まない種と大きく異なった。Ca含有量に対するPの含有量の割合はナヌカザメ、ホシザメ、アカエイ、ホシエイ、シロシュモクザメ、エイラクブカで成長に伴い減少傾向を示した。他の元素においても若千減少傾向を示す種があった。このCa含有量に対する他の4元素の含有量の割合(Ca濃度比)を元に群平均法を用いて各種の類似度をクラスター解析すると、黒い粒子を含む6種は他種と大きく異なり、特にカスザメとネコザメは6種の中でも大きく異なった。また、黒い粒子を含まないがハナザメは他種と異なり、独立したグループとなった。これはハナザメのPとMgの濃度が他種に比べ著しく大きいためと考えられた。これらの7種を除く39種ではクラスター解析により大きく5つのグループに分けられた。グループの種組成は主として系統類縁関係を反映しているが、系統とは無縁の構成も見られ、食性や棲息場所との関連性も示唆された。
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