1.コイの筋形質タンパク質(SP)とパルブアルブミン(PA)溶液に対してトリオレインを分散相として加えてディスパーザーあるいは超音波ホモジナイザーで水中油型エマルションを形成させ、水-油界面へのタンパク質の吸着挙動およびエマルション粒子の分散安定化に対するPAの役割を検討した。 2.レーザー回折粒度分布測定、光学顕微鏡観察、濁度の3指標によるエマルションの評価は、SP乳化系では乳化粒子の凝集のために一様ではなかったが、PA乳化系ではよく一致 した。 3.PA乳化系では、優れた粒度分布(サイズ)と粒子密度を示し、中性条件下における不安定化過程はクリーミング先導型であるが、凝集・合一過程の進行速度は著しく小さく、粒度分布特性は安定であった。 4.SP成分間においてPAの水-油界面に対する優先的吸着挙動は認められなかったが、エマルション粒子の分散安定化には物理的微細化による相対比重の増大とPAの吸着が寄与すると考えられた。 5.化学修飾によって等電点をシフトさせたPAによるエマルションの粘度分布特性とクリーミング挙動から、その凝集度にはpHに依存する荷電状態が密接に関係し、クリーミング現象は荷電状態には関係なく吸着タンパク質量と強く関連していることが示唆された。 6.PAは、低濃度でも粘度分布の安定性に寄与しており、水-油界面において少ない吸着量で広がって安定な膜を形成し、負に荷電した吸着タンパク質の静電的反発力によって分散を保ち、粒子の合一に対する安定性を付与する機構が考えられた。反面、分散安定化に要するPAの吸着量が少ないことは比重が小さくクリーミング速度が大きいエマルション粒子の形成要因であることが示唆された。
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