研究概要 |
当初計画で申請した前進突然変異試験法を用いる測定システムは、変異株と非変異株を識別する抗生物質混在下での変異株の成長が予想以上に悪く,クラーク型電極でその差異を検出できるほどには大きくならず,変異原性検出に関しては実用的な測定機器とはならないことが年度途中で判明した。そこで代案として、全く別の原理に基づく変異原センサの試作を試みた。半年余りであるが、一応の結果を得たのて以下に報告する。 これは突然変異が起きた菌体内で、変異修正のために発動される一連の酵素反応(SOS反応)のうち、β-ガラクトシダーゼ活性の強さがDNA上の突然変異量に比例する関係に着目したものである。システム作成に必要なグルコースセンサの組立と酵素の固定方法の検対については、グルコース検出感度・固定化酵索の安定性の点をクリアできたので、濾紙薄膜による吸着固定法を採用した。次に内部の酵素群を抽出するのに欠かせない菌膜の破壊方法は,迅速化のため原報にあるタンパク変性剤などの試薬類は一切用いないことを原則に種々検討した結果,細胞破砕用の超音波発生装置で極めて短時間(3-5妙)の処理で目的を達成できた。ハード面での条件設定が出来たので、酵素反応基質(β-ラクトース)の添加濃度を水溶液として0.25g/ml,および反応時間を5分間に設定した。混在するα-型グルコースの対策としては、固定化酵素膜にムタロターゼを併用することですべてβ-型として測定できることを確認した。実際にセンサを使用するには、既知変異原物質を用いて測定を行わなくてはならない。現在この段階の検討を行っているところであり、時間的には従来のumu試験法の半分程度の時間で測定結果が得られている。しかし予想外に陰性対照値が高いため、現段階ではかなり狭い濃度範囲でしか測定に成功していない。目下この原因を追究中であるが、二年間の研究期間終了後も継続して試験を行いなるべく早い時期に完成したいと考えている。
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