研究概要 |
1.本研究で開発したポルフィラン(Por)構成糖分析法を改良・確立した。Porの特徴的構成糖である3,6-アンヒドロ-L-ガラクトース(AG)は、酸加水分解やメタノリシスにおいて破壊されるので、GLCやHPLCによる分析が不可能であった。Porを無水条件下でメルカプトリシスすることにより、AG及びその他の構成糖をジエチルジチオアセタール誘導体として定量的に遊離させることに成功し、これら誘導体をGLCまたはHPLCで定量する方法を確立した。この分析法[10th European Carbohydrate Symposium(Galway,1999)でAward for the best poster受賞]により、Porの詳細な性質や構造の研究を可能にした。 2.確立したPor構成糖分析法を利用して、ノリ(海苔)の化学的品質判定法を案出した。Porの糖組成がノリの品質により著しく異なっていることを見いだし、この性質をノリの品質判定に応用した。上等ノリはAG:ガラクトース(Gal)≒1.0:7〜8、6-0-メチル-ガラクトース(Me-Gal):Gal≒1.0:100、下等ノリはAG:(Gal)≒1.0:3.6、6-0-メチル-ガラクトース(Me-Gal):Gal≒1.0:15で、中等ノリはこれらの間の値を示した。 3.Porは、分子サイズ(平均分子量13,000)、糖組成及び硫酸基含量において著しく不均一であることを具体的に明らかにした。 4.Porが示す著しい不均一性の原因を究明した。Porをβ-アガラーゼで徹底的に分解し、分解物を分画・分析して、Porには30〜60個のGal残基の並んだ糖鎖構造(ポリガラクトース構造と提唱)を有する分子が20〜30%存在することを明らかにした。この化学的性質がPorのゲル化を妨げている主要因であると考えられる。
|