本年度は(1)フードシステムの構造変動と家族の生活様式に関する理論的研究の展望、(2)農業関連の事例として国内産糖のフードシステム、(3)水産業関連事例としての水産養殖に関連するフードシステムについてとりあげた。 伝統的な経済理論では「家計」は消費主体であり労働を通じて所得をうると考えられてきた。しかし、労働が希少となり社会進出するに従い、家事労働を家計内の生産と見なして調理済み食品の購入、育児その他の家事を労働の市場での調達を経済学的に分析する研究がなされるようになった。ここではベッカーらによる「家族の経済学的研究」のサーベイをおこなった。これは目下準備中の「フードシステム全集」の一部に位置づけることを意図している。 食糧消費は実質所得の増加に伴って変化する。甘味としての砂糖は一人当たり年間20キロを切るようになっているが、代って異性化糖の消費が増加している。砂糖消費量が減少する中でビート糖、甘しゃ糖の生産調整が困難な状況にある。この問題に関して沖縄において甘しや糖、ビート糖生産とビート糖の生産調整をめぐるコンフリクトの発生に関する調査・研究をおこなった。 水産業でのフードシステムでは養殖技術の進歩が在来の生産様式に与える影響が問題となり、輸入増加とも関連する問題である。フグは養殖技術が確立しつつあり、天然のフグと市場において競合する関係にある。他の魚種についても同様の問題がある。ほかに岩手県の三陸沿岸の養殖漁業についても調査をおこなづた。
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