本年度は(1)フードシステムの構造変動と家族の生活様式に関する理論的研究の展望、(2)北海道畑作と食料需要の変化と北海道畑作、(3)水産業関連事例としての水産養殖に関連するフードシステムについてとりあげた。 (1)経済学における家計の研究の新動向をサーベイし、わが国の家族のありかたの変化とどのように対応しているかについて検討した。労働が希少となり社会進出するに従い、家事労働を家計内の生産と見なして調理済み食品の購入、育児その他の家事を労働の市場での調達を経済学的に分析する研究がなされるようになった。 (2)では北海道の食料供給のありかたが畑作の場合、生鮮食料品の供給へシフトしつつあること、そのための流通の変化、食品加工への原料供給の新動向について明らかにした。 (3)魚類養殖のフードシステムはこれまで産地買い付け業者、及び中央市場の卸売資本の連係を軸に展開してきた。しかし、ノルウェーやチリにおけるサケの企業的養殖の興隆に伴う我が国への輸出ラッシュが、養殖ブリ・マダイ・カンパチといった成魚価格の暴落や経営悪化・廃業をもたらすに至り、これまでの商業資本による産業的発展の仕組みの限界をさらけ出すようになっている。養魚を巡る国際間競争激化が、我が国の養魚業界仕組みそのものの抜本的改革を迫っているといってよい。こうした状況下で、流通資本に依存しない販売手段や、漁協・系統とは一線を画したグループ化といった新たな動きが愛媛県や高知県で出現中である。
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