研究概要 |
第1章では,食品用大豆に関するフード・システム論的分析を行った.まず,大豆食品の需要と製造の動向,食品用大豆市場とそこにおける制度的,政策的側面を検討して,食品用大豆のフード・システムが分断されていること,つまり,国内の大豆生産者は過去に市場獲得の機会があったにもかかわらず,それをものにすることができなかったことを明らかにした.一方で,ある程度は需要動向に反映した生産対応が行われていることについても,北海道を事例とした大豆の品種選択の検討によって示した. 第2章では,近年の砂糖需要の変化を定量的に検証するとともに、その変化が砂糖のフードシステムに与える影響を検討した.その結果,(1)嗜好の変化、(2)代替甘味料、(3)加糖調整品の輸入や実需者の海外シフト,による砂糖需要の減少が明らかとなった.そのため、精製糖と国内産糖のメーカー間でコンフリクトが強まり,この問題の根本的な解消には、国際競争力強化を目指す方向と地域経済を維持する方向とにその目的を分化させ、その目的に添った施策を実施していく体制作りが必要であることを明かにした。 第3章では,地球環境を意識した時代にふさわしい食生活が求めらる今日の変化を背景に,食品廃棄物の有効利用の実用例と馬鈴しょデンプンを利用した生分解性容器の開発事例について紹介した. 第4章では,国際競争が厳しさを増す環境下において,わが国のフードシステムの成立条件を踏まえた上で,輸入原料および輸入製品との競合関係に焦点をあて,てん菜,馬鈴しょ,たまねぎ,スイートコーンの4作物を起点としたフードシステムの原料産地戦略について検討した.その結果,今日の厳しい競争条件下では,原料産地と加工メーカーとが基本的には共生関係にあることを認識し,産地戦略の立案では、フードシステム全体がいかに発展していくのかという間題意識が重要となっていることが明らかとなった.
|