ポーランドにおいては、1992年から国営農場が所有していた資産を新たに設立された農業資産庁が取得をはじめ、1996年にはほぼ全ての旧国営農場の資産を取得した。他方、取得した資産の販売・賃貸は1993年から始まり、これまでに13.3%が販売、62.3%が賃貸された。このように賃貸シェアに対して販売シェアは非常に小さく、政府が本来目的とした旧国営農場資産の民間への販売は順調には進展していない。当研究は、なぜこうした現象が起こったかを本年度の中心課題とした。 この検討のために、民間農業における生産関数を推計し、土地の限界生産性を計測した。そして、土地の販売価格、土地の賃貸価格、土地の限界生産性を比較した。その結果、(1)土地の販売価格は土地の限界生産性よりかなり高く、(2)土地の賃貸価格は土地の限界生産性よりかなり低くなっていた。すなわち、個人農家にとっては、旧国営農場の資産を購入するよりも賃貸する方がはるかに有利であることが判明した。こうした価格付けが、賃貸需要を拡大したのである。 また経済改革開始後における農産物価格の低下も、土地譲渡形態に大きく影響している。すなわち、経済改革によりそれまでの農産物政府買入れ量が減少し、市場取引の割合が大きくなった。このため農業部門の交易条件は低下し、農家経済は相対的に悪化している。こうした状況も農地購入を抑制する要因となっている。さらに、自己資金の少ない個人農家にとって土地購入資金は銀行借入となり、金利負担も大きく、農地購入の抑制要因となっている。 旧国営農場土地資産の販売価格と賃貸価格がどのような要因により決定されたかについては、ハンガリーなど他の中欧諸国についての検討も、この問題を分析する上で重要になると考える。
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