ポーランドにおいては、1992年から国営農場の所有資産を新たに設立された農業資産庁が取得をはじめ、1996年にはほぼ取得を了した。それらの資産はこれまでに、15.2%は販売、64.7%が賃貸された。このように賃貸に対して販売シェアは非常に小さく、本来目的とした資産の民間への販売は順調には進展していない。ハンガリーにおいては国営及び集団農場の土地を、1940年代の所有者又はその子孫に全部または一部を返却することを基本とした改革でるが、その実施も同様に時間がかかっている。 ポーランドにおける個人農家の生産関数を推計し、土地限界生産性を計測し、土地の販売価格、土地の賃貸価格、土地限界生産性を比較した。その結果、(1)土地の販売価格は土地限界生産性よりかなり高く、(2)土地の賃貸価格は土地限界生産性よりかなり低くなっていた。すなわち、個人農家にとっては、資産庁所有地を購入するよりも賃貸する方がはるかに有利であることが判明した。また資産庁所有地が地域的に偏在し、地域的に農地過剰供給が起こり、その販売を困難にしている。さらに経済改革により農産物価格が低下し、個人農家の農地購入意欲を抑制する要因となっている。他方、ハンガリーにおいては農地を前所有者に返却する方法を採ったため、多数の旧所有者からの返却申請の確認に時間がかかっている。同時に旧所有者が取得農地の所有権を確立する行政的な手続き、多数の新規小農家を支援する制度的な枠組みが確立していないため、農地移転が進展していない。
|